申立に至るまで

自己流後見もどき

伯母の病気診断から成年後見制度利用まで、民法第697条「事務管理」を法的後ろ楯と勝手に決めて『自己流後見もどき』を始めました。別記『申立をためらった理由』の他に、とにかく祖母・伯母ダブル介護で手一杯で申立どころじゃない。成年後見制度を意識しながら『後見もどき』で乗り切る、といった感じでした。
社会福祉協議会の権利擁護サービスも検討しましたが、伯母がヘルパーやケアマネさえもなかなか室内に入れず、そもそも介護保険サービスを十分に使う事が出来ない状況でした。ヘルパーさんも懸命に努力して下さったのですが、2年半に渡る伯母の在宅独居生活はほとんど家族の通い介護でしのぎました。祖母の入院や老健入所もあったので、それ以上に物事を煩雑にする(権利擁護サービス導入手続・担当者と伯母との仲介など)気力は失せていました。

『自己流後見もどき』で心掛けた事。
1)身上配慮関係
それまで祖母の主介護者かつ扶養者だった伯母自身が要介護となり、祖母と伯母についての情報をテキスト化し、共有しやすくしました。別世帯なので、同居家族と違って二人の生活の全容を知る作業が必要でした。
又、口伝えでは不足だったり不正確になり易いので、病院や介護スタッフとの連絡にもそのデータを利用しました。介護家族の中にヘルパーさんとの連絡や要介護認定調査の為に「介護ノート」を作る方々がいらっしゃいますが、私のデータもそのような「介護ノート」を元にしたものです。例えば要介護認定調査においては、調査項目に沿った形式に上記書類を編集することで、調査員の理解を得やすいようにしました。後見開始申立時の「意見書」でもこのデータを利用しています。
・祖母・伯母それぞれの病歴や当時の状況・生活暦・嗜好などを、本人・家族に尋ねながら書類にまとめる。
・家族代表者には私がなり、対外交渉窓口をはっきりさせる。
・家族関係・連絡先などの表を上記書類に加える。
・病院診察券・保険証などの原本は私が預かり、コピーを本人や他の家族へ。
・介護保険サービス・病院・施設などの情報収集・調査・選択。
・介護保険制度・病気について理論と現実を学び、交渉にあたる。
・病状の進行を見越しながら、起こりうる事への対策・入所等に備えた計画。

2)財務・事務管理関係
伯母に尋ねながら、祖母と伯母双方の年金・健康保険・税金・公共料金等の手続・事務、財務状況などを把握(捜索も)しました。全部を把握するまで1年近くかかりました。
○祖母と伯母の財務分離
・伯母の祖母を扶養する立場=祖母の費用を支払う立場を解消し、
 祖母の費用は祖母自身の財産と他の家族(伯母の妹2人)が負担する事に。
・伯母の妹2人からの祖母への仕送りを止め、誰が何を負担するのか定める。
・祖母の財産からの支出項目
  =医療・介護保険サービス費用や病院や介護施設などから要求されたもの(診療費・薬代・おむつ代など)
・他の家族の負担項目(仕送りのかわり)
  =上記以外で日常生活品・嗜好品など。
・祖母の『後見もどき』帳簿と立替た家族の為の清算、その記録の作成・領収証など書証も整備。

○伯母の事務・財務管理
・預金証書・印鑑・年金保険証書・権利証などの重要書類の保管
伯母のプライドに気をつけながら、病気の進行(本人の管理能力の変化)に従い、本人の了承を得て私や他の家族が預かる。
誰が何を預かっているかを明確にし、伯母が不安にならないよう事情説明メモと書類のコピーを渡したり、何度も説明を繰り返したりした。
・銀行や税務署などの手続
  =必ず本人を連れて行き、そこで再び本人と担当者に説明。
・日常の現金管理と銀行口座の整理(特に自動引落分)
  =伯母ひとりで銀行引出ができなくなって。
・祖母と同じく、病院などの費用を他の家族が立替た時の清算。
・郵便転送手続=行政・銀行などからの郵便について
  =伯母が内容を理解できず、混乱したり紛失したりしたので。

3)書証・記録(法的根拠)とリーガルマインド(法的な考え方)
介護・医療等の交渉・契約・事務・財務管理等をする折に、常に本人と家族の確認や了解だけではなく、記録・帳簿・領収証などを整備し、本人に関わる介護・医療スタッフ・裁判所や行政に対して堂々と申し開きできるよう注意しました。
ちょっと怪しいな=脱法行為かなと思った時はとりわけその行為に至った理由と記録を吟味し、素人考えですが法的理論武装にも励みました。

4)情報の一元管理を避ける
上記の書類や情報を私だけで管理するのではなく、他の親族やスタッフと共有するようにしました。
重要書類・財務関係帳簿や領収証などは必ず複数コピーをとって他の家族にも送り、チェックしてもらうようにしました。後見事務報告の簡易版ですが、1〜2ケ月毎に送っていましたから、今やっている家裁宛の1年単位報告の方が楽です。

以上は、私の立場を守る為でもありました。後見人になる迄の法的根拠は『事務管理』と思っていても、所詮素人ですから不安でした。記録と書証の整備に非常に気を使いました。


実際には沢山あり過ぎる印鑑や通帳紛失事件、二重払い事件など色々な事が起こりました。私を疑う電話を何回もかけてきて精神的にまいったこともありましたが、基本的には伯母が私や私の母(妹)を信頼してくれていたので助かりました。時々、真面目な性格故の義務感から祖母の支払をしようとして、家族や病院を混乱させてくれましたけれど。
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申立をためらった理由ーその4

現実の介護に追われて、なかなか探す時間がとれなかったのが一番でしたが、当時(平成12年)は介護保険・成年後見両制度の始まったばかりのせいか、現実に即した情報や相談相手に出会えませんでした。
最初の2年間、ステップ・社会福祉協議会・いきいきライフセンター・リーガルサポート・書籍・インターネットを通じて下記のような疑問の答えを探して回りました。しかし、ほとんどが制度の概略説明か「経験案件が少なくわからない」という理由で明快な答えは得られませんでした。又、成年後見制度だけでなく、アルツハイマーという病気や介護保険制度の実状に詳しい法律専門家にお会いする機会も時間もありませんでした。

1)制度そのものへの疑問
  申立をためらった理由ーその2 制度に対する不信感
  申立をためらった理由ーその3 制度の理念はどうしたの?
2)告知の問題も含めて、本人にどのように制度利用を説明すればよいか
  申立をためらった理由ーその1 病名告知
3)アルツハイマー病の場合、本人の意思決定能力についてどう判断すればよいか。
4)任意後見か法定後見か。
5)実際の申立手続は具体的にどのようなものか。特に本人に対するものはどのようなものか。
6)第三者後見ならば、具体的にどんな事をしてもらえるのか。どこまで信頼できるのか。

結局、私の疑問に応えてもらえる所にたどり着くまで3年かかりました。その方々にもっと早く出会っていれば、病名告知も成年後見利用についても本人の意思を確認でき、もっと意向に添えたのではないかと悔やみます。
介護保険制度で散々感じたことですが、制度の枠組みやサービス内容をいくら説明されても、現実の対応は随分違いました。
必要な時に必要なサービスが使えない。施設やスタッフの質に大きな違いがあり過ぎる。運良く良い施設やスタッフに巡り会えれば良いが、運が悪いと家族は介護しながらまともな施設やスタッフを探しまわらねばならない。自由にサービスを選べる筈でしたが、選ぶ為に必要な情報を得ること自体が難しいのです。
一番痛切に感じたことは、現実に今何が出来て何が出来ないかという事を制度利用の際にきちんと伝えて欲しいという事でした。
成年後見制度も5年を経て、実体験から得られた様々な情報や問題などが蓄積されてきたと思います。
法律や福祉の専門家による第三者後見の方々も苦労なさっていることを、ネットや書籍・講演会等で知ることができつつあります。家族後見であれ第三者後見であれ、問題は同じです。制度の概略だけではなく、実体験から得た情報や問題点をもっと広く共有する方法を見つけ、家庭裁判所も積極的に今ある問題点や情報をまとめてレクチュアして頂きたいと思います。

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申立をためらった理由ーその3

成年後見制度は理念として『自己決定の尊重や身上配慮の重要性』を唱っていますが、調べるうちに『制度の理念はどうしたの?』という印象が強く、本当に有意義な制度なのか私自身が納得する時間が必要でした。

■平成11年12月 担当:法務省民事局  成年後見制度等関連四法の概要
成年後見制度の改正の理念

自己決定の尊重,残存能力の活用,ノーマライゼーション等の新しい理念と従来の本人の保護の理念との調和を旨として,柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度を構築するための検討が行われた。

  身上配慮義務及び本人の意思の尊重等 (注:民法858条)

自己決定の尊重及び身上監護の重要性を考慮して,現行民法第858条の規定に代えて,成年後見人等は,その事務を行うに当たっては,本人の意思を尊重し, かつ,本人の心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない旨の一般的な規定を創設する。

平成12年当時は制度発足間も無い事も有り、任意後見の財務管理に重点をおいた情報が主で、本人よりも例えば金融機関など市場取引の安全確保ばかりがクローズアップされているような印象が強かったです。
  家族が「遺産相続」や「預金引出」の為に利用する制度なのか、
  金融機関や行政が自分達の立場を守るためにある制度なのか、
  財産がない人には不要なのか、
と思ってしまいそうなほど、「権利擁護」や「身上配慮」はお題目だけで、その事を具体的に説くようなものになかなか出会えませんでした。

■ジュリスト 2002 2000.2.15号(No.1172)より引用
成年後見制度と立法過程〜星野英一先生に聞く
2身上監護について

星野:世間では改正後の成年後見制度は、身上監護を強化するものだ、という誤解があり、ある方はどこかの座談会で、「そういう間違った期待をうまく利用して機運が盛り上がった」と言っておられますが、幻想を与えてはならない。その点を十分PRせよということは、法制審議会でもしばしば発言され、福祉団体の方も理解されて、PRしておられます。 (中略)
そもそも能力制度は、その人の財産を管理するための制度です。だから、我妻先生の本などにも、それらは、財産のある人のための制度であって、財産のない人を保護するものではないと書いてあります。ですから、財産管理が中心であるのは当たり前のことです。 (中略)
しかし、一方で民法858条があります。他方、身上監護制度への期待は幻想にしても大きいので、それにどう対処するかが非常に議論になりました。

そうです、星野さん。私はまさに「大きな幻想」を持っていました。
あくまで本人の権利擁護の為に身上配慮義務があり、その為の財務管理であるという私の成年後見制度像は「大いなる幻影」なのですね。
でも「間違った期待」は「正しい期待」にしないとダメじゃないかなと、私は今考えています。
  

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申立をためらった理由ーその2

介護保険制度の不備に遭遇し、成年後見制度に対しても同じではないかと疑いを持ちました。

特に法的な面で介護保険サービス契約などで、
本人の意思決定能力を鑑定したわけでもないのに、当然のように家族が代理署名できることに違和感がありました。(平成12年当時の東京都モデル契約書にも介護保険契約に家族の代理署名欄がありました。)

祖母の老健(介護老人保健施設)入所での経験です。
この老健については国保連(国民健康保険連合)に苦情申立をした結果、指導が入りました。その調査結果を伺ってから、身元保証人として施設に情報開示を求めた時、本人でない事を理由に断られました。
家族に代理署名や身元保証を求めるのにもかかわらず、情報開示請求権が無い事に驚きました。
祖母にも成年後見制度は必要だと思いました。

[ 介護保険制度の問題 ]
・国保連の助言・指導の実情は「お願い」しかできない。
・苦情処理があいまいなまま終了する可能性がある。
・施設主体の誓約書・記録の不備など、
・契約上の問題ある施設の情報・改善情報を公開してほしい。
・本人・身元保証人の請求権を法律で明記してほしい。

要介護度更新調査に立ち会って、アルツハイマーについての(痴呆についての)認識に欠けるような対応(質問の仕方)など調査員によって調査の仕方にばらつきがありました。
成年後見制度についても同様の可能性があるのではないか、
調査官の伯母への対応(本人調査)に不安がありました。

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申立をためらった理由ーその1

伯母に対し、どのように病名告知・制度の説明をするかで悩みました。
私自身は病名告知は必要と考える人間です。
伯母は論理的説明を欲する人です。
制度を利用するにも、なぜ必要かを伯母に納得してもらうには病名告知は避けられないと思いました。
本人への病名告知をするべきかどうか、告知するとすればどのように話すか。
ひとり暮らしでしたから、話した後の心理ケアはどうしたらよいか悩みました。
  話しても、すぐ忘れる可能性が高いので無意味かもしれない。
  だが、時期を逸して病状が進んだ後では後悔するだろう。
  当時の主治医と妹2人(もう一人の伯母と私の母)は告知に反対でした。

何度か病気について話せる時期を探っていましたが、ようやく診断1年後に話しました。(成年後見制度については、私自身がまだ納得できなかったので触れませんでした。)

元気で落ち着いていた日でした。
以前の胃ガン告知の時の話を聞いた後、世間話風に病名告知について話をもって行きました。
伯母の「年だから、何があっても驚かない。自分の事は知りたい。」という言葉で、話す決心が付きました。
レーガンなどを例に、記憶伝達の細胞が減少する等、順を追って病気の概略を話しました。重度になった時の事はあいまいに伝え、薬を飲むことで現状維持が望めると伝えました。
この病気は集中力に波がありますが、その時の伯母は以前の姿に近く、とても真剣に聞いてくれました。

延命措置・施設入所・死後の事についての希望も聞きました。
(この時に聞いておいて、本当に良かったと思っています。)

【 病名告知についての参考資料 】
http://www.pmet.or.jp/work/kyozai2/index.html
インフォームド・コンセント事例集 part2
(医師の実践レポートとインタビューです。)

http://www2.eisai.co.jp/clinician2/bknmber/no506.html
http://www.e-clinician.net/vol48/no506/index.html
痴呆症Q&A−家族・介護者からの質問にどう答えるか
(エーザイ株式会社発行の定期刊行誌)
CLINICIAN(クリニシアン)vol.48 no.506(2001年12月1日発行)号です。

この号の中に下記の記事(Acrobat書類)があります。

http://www2.eisai.co.jp/clinician2/cl2_01_506/sp_506_02.pdf
http://www.e-clinician.net/vol48/no506/pdf/sp_506_02.pdf
  座談会:アルツハイマー型痴呆患者、家族へのインフォームド・コンセント
  新宿一丁目クリニック 院長 ・ 青梅慶友病院 副院長 斎藤正彦
  東京慈恵会医科大学 精神医学講師 繁田雅弘
  (司会)東京医科大学 老年病学助教授 岩本俊彦

私はこの記事を読んで、伯母に話す決心をしました。
本人がどれだけ理解できるかどうか、誰にもわかりません。
「わからないだろう」から告知しないというのは、理由にならないと思います。
愛情から「告知してショックを与えたくない」と思うのは当然で、私もそれで散々悩みましたが、
何かおかしいと感じて不安の中にいる本人が、病気がその原因だと知る事・自分の将来を自分で決めるチャンスを持つ事の方が、より大切ではないでしょうか?

上の座談会記事からの引用です。

繁田: 確かに理解力や同意する力は、なかなか測りにくいところがあると思います。症状がある程度進んでいるとすれば、話してもわからないかもしれません。しかし、話して内容を一部でも理解するとすれば、患者さん自身の浅い理解かもしれませんが、それをサポートすることで結構家族と一緒についてこられるような気がしているのです。

斎藤: その後のフォローの問題だと思うのです。私自身は告知できるかどうかは患者さんの要件よりは医者の能力というか、フォローできる時間があるかどうかということを含めて、医者の側の要件だと思います。それと、インフォームド・コンセントという概念があまりに患者さんの権利ということでばかりいわれて、契約云々で、「言ったんだから私には責任ありませんよ。あとの決定はあなたのせいですよ」という態度は、私はまずいと思います。

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私の背景

伯母は独身で仕事を持ち、祖母とずっと二人暮しでしたが、
平成12年にアルツハイマー中期の診断を受けました。当時74歳で、伯母自身も祖母(当時95歳)の介護者でもありました。
それまで10年に渡って祖母の通い介護を続けてきた他の娘二人も70歳を超え、そろそろ息切れし始めていたところでした。
丁度、介護保険・成年後見の両制度が始まった年でもありました。
当初は家族全員が伯母の病気を受け入れる事と二人の介護で手一杯で、私が各所との事務連絡や交渉、二人の財務管理を担当することになりました。
成年後見制度の存在も知りましたが、祖母の骨折入院や独り暮らしになった伯母の介護という現実がいつも先行していました。
平成14年春、祖母が亡くなり、その秋に在宅が限界に達した伯母を施設入所させ、平成15年3月、ようやく『後見開始』の申立をし、私が後見人となりました。

伯母・姪であり別世帯という、半ば家族・半ば第三者という関係であったせいでしょう。伯母については、最初から成年後見制度についても関心が向きました。
家族だけでは全てを担いきれない可能性があると思い、第三者後見を前提に制度について調べておりました。しかし必要と思いながら、私が実際に申し立てるまで3年かかりました。

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